「蘇莫者」のこと~葦の風no.7

「蘇莫者(そまくしゃ)」は雅楽の古典曲で、さまざまな曲の由来が伝わっています。

ひとつは、この曲は西域から伝えられて唐の時代にはやったという渾脱舞で、曲名は蘇莫遮という高昌国(トルファン)の帽子の名から来ているというもの。

聖徳太子が河内の亀瀬を通るときに馬上で尺八を吹き、山の神が喜悦して舞ったありさまをこの曲にしたともいいます。

また、修験道の祖とされる役行者(えんのぎょうじゃ)という人が大峯を下るときに笛を吹くと、山神が出てきて笛に合わせて舞った。それで大峯には蘇莫者の岳という場所があったも伝えられています。

役行者(役小角。634年伝-701年伝)と言えば7世紀末の山岳修験者ですが、本日最後に演奏する「西遊記」に登場する三蔵法師のモデル、玄奘三蔵(602年-664年)も、実はほぼ同じ時代を生きています。

舌を出した猿の面を着けて舞う舞楽「蘇莫者」と、険峻な山や川をものともせず三蔵法師のお供をして取経の旅を続ける猿、孫悟空に、同時代のなにか重なるものを感じまして、今回の演奏会の古典曲としてこの曲を演奏することにいたしました。

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