松平頼暁先生のこと

今年(2023年)1月にお亡くなりになった松平頼暁先生との関わりを少しだけ書かせていただく。
先生と何かの折にお会いすると、ガムランで先生の曲を演奏させていただいた時のお話になることが多かった。ガムランのための「鳥類学(Ornithology)」を演奏させていただいたのはいつだったろう。

ランバンサリのサイトの演奏会履歴に
1989年6月4日ミュージックシアター・パートII(バリオホール)
とあるから、多分この時のはず。作品表では「鳥類学」は1987年となっているから、初演ではなかったのかな、と楽譜を出版しているマザーアースのサイトを見てみたら、大阪のダルマ・ブダヤ初演となっていた。
うちにも「鳥類学」の楽譜があるはずだが、探しても見つからない!このころ演奏したガムランの曲、菅野由弘作曲「星流譜」(1987年10月4日初演)はあるのに。。。

松平頼暁先生の雅楽のための作品も1曲演奏させていただいたことがある。
「FRESCO(壁画)(1991)」。
一柳慧先生率いるTIME(Tokyo International Music Ensemble)による「音楽の現在7 新しい伝統」という神奈川県立県民ホールでの公演(1991年10月25日)で初演した。編成は12名の雅楽奏者(管絃2管通りの11名+篳篥だけ1人多い)。
曲は、ほとんど剥がれ落ちてしまったフレスコ画の断片を思わせるわずかな音から徐々に音の厚みが増していく。最後にはまた音が減り、「時は折々の花をもって巡って来る。しかし、色褪せた美には二度と春が戻ってくることはない。しかも、色褪せるのが美の本質である。」という語りが入っていた。
雅楽奏者だけで演奏できる曲なので、いつかまた再演したい曲である。

演奏した形跡のない、ピアノと篳篥3管のための曲の譜面も出てきた。
「Convolution(1994)」。複雑そうなリズムに切れの良い短音が要求されていて、篳篥的にはかなり難易度が高そうだ。こちらも楽譜出版しているマザーアースの情報によると、1994年10月2日渋谷淑子ピアノリサイタル《時空・響・流転》で初演されていて、CDにも収録されている(ALCD-46)。篳篥は八百谷啓、柴山洋、溝入由美子の三氏が演奏されている。

作品リストを拝見すると、松平頼暁氏の邦楽器を使った作品はそれほど多くない。その中で、篳篥3人とピアノの曲があったり、「壁画」では篳篥だけ1人多かったりするところを見ると、先生はもしかしたら篳篥がお好きだった…のかもしれない。
お父様の松平頼則氏が沢山の雅楽を題材とした作品を作曲されていることを考えれば、頼暁氏も雅楽に関心をお持ちだったと思う。もっとお話を伺ってみたかった、と今になって思う。

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