芝祐靖作曲「招韻」のこと

今度「伶楽舎雅楽コンサートno.40芝祐靖作品集その4」(2023年5月28日)に演奏

する「招韻」は1977年に作曲された小野雅楽会委嘱作品なので、小野雅楽界発行の『雅楽界』第55号には作曲された芝祐靖先生による解説と、スコア全ページ!!が印刷されています。

芝先生は「招韻」以前に、雅楽器の合奏曲として「舞楽風組曲」「春日二題」「天地相聞」をNHKの委嘱により作曲されていますが、民間雅楽団体から委嘱を受けたのはこの「招韻」が初めてだったようです。
宮内庁の楽師ではない奏者たちが新作を演奏するのも初めてだったので、練習時間を十分に取るため、1978年11月の演奏会初演にたいして1年以上前の1977年7月に作曲を終えられています。

1970年代の小野雅楽会

は、1972年に第一回アメリカ公演で石井真木作曲「オーケストラと雅楽器との協奏曲「遭遇Ⅱ番」を小澤征爾指揮サンフランシスコ交響楽団やフィラデルフィア管弦

楽団と共演して世界初演、1973年には香港共演で石井真木作曲「紫響」(雅楽アン

サンブル)を演奏、1979年には第一回欧州公演を行っていて、海外公演や雅楽器協奏曲演奏を盛んに行っていた時期となります。

たまたま同じ『雅楽界』55号に1979年の海外公演記録と新聞批評が掲載されていたのですが、
公演曲目は、管絃が「越天楽」「陪臚」「合歓塩」「抜頭」。
新作曲は石井真木作曲「紫響」「遭遇Ⅱ番」。
舞楽は「蘭陵王」「納曽利」「還城楽」「五常楽」。
公演日程は6月14日~7月5日の間に、ベルリン、パリ、オランダ各地、ミッデルベルクにて公演7回とレコード録音、ラジオ録音、と、なかなかの強行軍です。

石井真木作曲の2作品の再演を繰り返したこの時期、満を持して委嘱されたのが「招韻」だったのですね。

「招韻」には、まるで雅楽そのものかと思わせるような旋律、奏法も多用されていますが、これは、あまり現代音楽の複雑さに寄せるのではなく、古典雅楽を愛好する奏者が演奏しやすいように、多くの雅楽人に愛される作品となるように、との芝先生の願いが込められているように思います。それは、民間雅楽団体からの初めての委嘱曲だったことも影響しているのかもしれません。

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