ヨシ原再生の試みの行方

『雅楽だより』最新号(35号) の「篳篥蘆舌ヨシと高速道路」の記事を読んで、この十数年間、鵜殿ヨシ原に対して、さまざまな試みが行われてきたことを知ることができた。
http://gagaku-kyougikai.com/index.html からPDFで読むことができるが、要約を書いてみる。
 鵜殿のヨシ原の危機は、淀川河川改修で川の水位が下がった時から始まっていた。
そして、その乾燥化した鵜殿のヨシ原を再生させる試みは1996年以来続けられていて、

①導水ポンプを設置し水路で下流に流して、水をヨシに近づける。

②ヨシ原を堀り下げて、ヨシを水に近づける。

③良質なヨシの地下茎を移植して新たにヨシ原を創出する。
という方法で模索されてきた。

 鵜殿の70%をヨシ原に戻そう、と始まった試みだが、十数年を経てその結果は・・・
①水を送っただけではヨシを回復させるのは難しい。
②土地を切り下げて良質ヨシの地下茎(根茎)を撒いても、ヨシは思うように生育しない。
③切り下げ地に撒くために茎を採取された場所にもその後ヨシは再生せず、ツル性植物にとってかわられた。
→つまり、ヨシ原は15%程度から増えず、特に篳篥用良質ヨシは昔から生えていた場所にしか生えていない、という結果に終わっている。
ヨシ原の再生は、人間が期待するようにはうまくいかないらしい。

ヨシ原と高速道路の共存が可能というNEXCOは、生育条件の調査を行い、生育可能地域の拡大を含めたヨシ原の保全に取り組む方針とのこと。
調査は予算と人手をかけて着々と行われているようだが、3年間の調査でヨシ原保全が可能になるなら、今頃鵜殿は予定通り7割がヨシ原になっているはずではないかと思える。
巨大な道路を作る力を身につけた人間だが、自然を思いのままに操れるほどの力を持つと、うぬぼれるわけにはいかないのではないか。

essay, topicヨシ, 淀川, 鵜殿