山口恭子作品個展

12月12日は山口恭子さんの作品個展演奏会でした。そういえば洋楽器主体の現代曲のアンサンブルに入って吹くのは久しぶりのことで、引き締まった緊張感をもって曲が仕上げられていく感覚がとても楽しかった。出演の皆さんもほとんど初めてお会いする方ばかりでしたが真摯に曲に取り組み素晴らしい演奏をなさっていて、刺激を受けました。主催のcircuitのみなさんや石塚さんなど裏で支えてくださる皆さんの温かい雰囲気も嬉しいものでした。
「発光素」は、これまでは笙で奏していたパートがアコーディオンに置き換えられ、松原智美さんと共演させていただきました。同じフリーリード楽器ながら、息を出した数センチ先にあるリードが振動する笙と、蛇腹の空気が押し出されてリードが振動するアコーディオンとでは発音のスピード感が違うんですね。おまけにアコーディオンは左右の手でボタンを弾くだけでなく顎まで使ってスイッチを切り替えて音域や音色を幅広く変えていて忙しそう。楽器も重そうです。
なんだか指孔9つだけの竹に、葦の吹き口をつけただけの軽ーい篳篥を持つ自分が申し訳ない気もしてきますが、まあそんなシンプルすぎる楽器で、口だけでシビアな音程を合わせたりpppからfffまで表現するのは結構大変ともいえます。
そんな全然違う楽器ですけれども、発光素が酵素と化学反応して光るように、二つの楽器がさまざまな光を発し、呼応する、ということが、それなりにできた気がして、楽しめました。
「根」は弱音篳篥の美しさを発掘してくれた作品の12年ぶりの再演でしたが、夏田さんの指揮に導かれ、篳篥はチェロとともにグリッサンドで根っこを伸ばし、ピアノや打楽器の打音に絡みます。
管楽器ながらこういう滑らかなグリッサンドができ、かつ息次第で大きく膨らませたり小さく消え入らせることができる、というのは確かに篳篥の持ち味ですが、古典曲では全く要求されない奏法でもあります。篳篥と私を信頼して、ここまで微妙な表現を要求して曲を書いてくださった恭子さんに感謝。12年前よりは少しは作曲者の意図に近づけたかな、と思っています。

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